はじめに
小学校音楽科の指導に用いられている、教科書に集録されている歌唱共通教材の数は、非常に多く、各学年の教科書に約30の曲が集録されている。それら一つひとつは、それぞれに特色を持った曲であり、児童の発達段階に応じて音楽指導ができるように曲目が集められている。
では、なぜそれらの曲が教材として用いられているのか、例をあげて解説していく。
「おぼろ月夜」
まず、歌唱共通教材から第6学年の「おぼろ月夜」を取り上げる。
歌詞は以下の通りである。
1 菜の花畠に、入日薄れ、
見わたす山の端(は)、霞ふかし。
春風そよふく、空を見れば、
夕月かかりて、にほひ淡し。
2 里わの火影(ほかげ)も、森の色も、
田中の小路をたどる人も、
蛙(かはづ)のなくねも、かねの音も、
さながら霞める朧月夜。
作詞者は高野辰之、作曲者は岡野貞一、編曲は高森義文である。
歌詞の「入り日」は「夕方に西のほうへ入ろうとする太陽」のこと。「山の端」は「山のはし。山と空とが接して見える境」。「里わ」は「里曲」と書いて「里のあたり」のこと。「ほかげ」は「火影」と書いて「火のかげ、火のひかり」のことである。
詩は1番2番とも...