1.はじめに
今回、「教育権」論をテーマに、旭川学力テスト判決を軸として考察を行った。「教育権」は後述するとおり、その定義は一義的ではなく、多くの概念を含んでいる。これまで多くの裁判の中でその「教育権」の考え方が争われてきたが、その中でも、教育権が国家権力に帰属すると解する「国家の教育権」と人民の基本権として人民に帰属すると解する「国民の教育権」という二つの考え方が対極に位置していた。その二つの考え方が本判決に至るまで、変容を遂げ、議論されてきたが、本判決により一応の決着がつけられた。
教育権‐旭川学力テスト判決を通じて‐
1.はじめに
今回、「教育権」論をテーマに、旭川学力テスト判決を軸として考察を行った。「教育権」は後述するとおり、その定義は一義的ではなく、多くの概念を含んでいる。これまで多くの裁判の中でその「教育権」の考え方が争われてきたが、その中でも、教育権が国家権力に帰属すると解する「国家の教育権」と人民の基本権として人民に帰属すると解する「国民の教育権」という二つの考え方が対極に位置していた。その二つの考え方が本判決に至るまで、変容を遂げ、議論されてきたが、本判決により一応の決着がつけられた。
私はテーマを決める上で、現在最も旬な話題である、「竹島」の記述に関する教育指導要綱や、一昨年改正された教育基本法などのホットな話題を取り上げようかと考えたが、まず、過去の判例に立ち返り教育制度をより深く理解するために、一番講義で興味を持ち、憲法学的にも重要判例のひとつである、「旭川学力テスト判決」を考察し、教育権論の流れとそれに関わる憲法的な議論を整理したいと考えたため、本判決を考察するに至った。
2.旭川学力テスト事件判決(最大判昭和51・5・21判時814号33...