『平成14年度 重要判例解説』
憲 法
1 法律上の争訟と建物明渡請求 ①最高裁H14.2.22、②同H14.1.29
○事案
宗教法人Xは、その住職であるYに対し、住職の地位を剥奪する処分をした上で、占有権原喪失を理由とする寺院建物の明渡しを求める訴えを提起した。
○争点
宗教団体の内部紛争は、裁判所法3条1項の「法律上の争訟」に当たるか?
○判旨
・結論 法律上の争訟に当たらない。
・理由 (①事件)請求の当否を決定するために判断することが必要な前提問題が、宗教上の教義、信仰の内容に深くかかわっており、その内容に立ち入ることなくしてはその問題の結論を下すことができないときは、その訴訟は、実質において法令の適用による終局的解決に適しない。
(②事件)訴訟の争点につき判断するために宗教上の教義及び信仰の内容について一定の評価をすることを避けることができないものであるから、その訴訟は、実質において法令の適用による終局的解決に適しない。
※補足
・法律上の争訟とは何か?
①当事者の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、かつ、
②それが法律の適用によって終局的に解決することができるもの (「板まんだら」事件)
2 司法書士会の総会決議と会員の思想・信条 最高裁H14.4.25
○事案
群馬司法書士会Yは、阪神淡路大震災により被災した兵庫県司法書士会に復興支援拠出金を寄付するとして、登記申請1件当たり50円を徴収するとの総会決議を行った。これに対して、会員のXらは、この決議が会員の思想信条を侵害し、公序良俗に反し無効であるとして、債務不存在の確認を求めた。
○争点
司法書士会の徴収決議が、会員の思想信条の自由を害するか?
○判旨
・結論 思想信条の自由を害するものではない。
・理由 司法書士会の目的には、他の司法書士会との間で業務その他について提携、協力、援助
等をすることも含まれる。そして、本件拠出金の調達方法についても、公序良俗に反するなど、会員の協力義務を否定すべき特段の事情があるとは認められない。
※補足
・群馬司法書士会事件 合憲 公益法人 強制加入団体 復興支援拠出金の徴収
・南九州税理士会事件 違憲 公益法人 強制加入団体 政治献金資金の徴収
「政党など規正法上の政治団体に対して金員の寄付をするかどうかは、選挙における投票の自由と表裏を成すものとして、会員各人が市民としての個人的な政治的思想、見解、判断等に基づいて自主的に決定すべき事柄であるというべきである。」
『平成14年度 重要判例解説』
憲 法
1 法律上の争訟と建物明渡請求 ①最高裁H14.2.22、②同H14.1.29
○事案
宗教法人Xは、その住職であるYに対し、住職の地位を剥奪する処分をした上で、占有権原喪失を理由とする寺院建物の明渡しを求める訴えを提起した。
○争点
宗教団体の内部紛争は、裁判所法3条1項の「法律上の争訟」に当たるか?
○判旨
・結論 法律上の争訟に当たらない。
・理由 (①事件)請求の当否を決定するために判断することが必要な前提問題が、宗教上の教義、信仰の内容に深くかかわっており、その内容に立ち入ることなくしてはその問題の結論を下すことができないときは、その訴訟は、実質において法令の適用による終局的解決に適しない。
(②事件)訴訟の争点につき判断するために宗教上の教義及び信仰の内容について一定の評価をすることを避けることができないものであるから、その訴訟は、実質において法令の適用による終局的解決に適しない。
※補足
・法律上の争訟とは何か?
①当事者の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、かつ、
②それが法律の適用によって終...