設題① ソクラテス的対話(産婆術)について述べ、ソクラテスの教育学的意義について考察せよ。
ソクラテスは真の知を獲得するために、他人と共に研究することが重要と考えた。つまり対話しあうことが知への道であり、最も有効な教育方法でもあると考えた。ソクラテスの対話術は、一般に産婆術と呼ばれている。それは、産婆が妊婦に子を産み出すのを手助けするのと同様に、教師の役割は学習者自身が真の知を産み出すのを手助けすることに他ならないということである。知の創造を出産に例えて、学習者は知の生産者、教師は産婆役に位置づけられている。そもそも全ての人は生まれながら道徳的に善悪を判断する能力を有しているのだが、ソクラテスの産婆術はこの能力をひとりひとりが自分で伸ばすように、教師が手助けすることを意図している。
この対話の概要は以下の通りである。まず相手に徳に関する質問をして、相手の意見を聞く。いったん相手の意見・立場を認めつつ、様々なことを説明させる。繰り返し説明させつつ相手の意見に矛盾があることを徐々に明るみに出す。相手の立場にあやまりがあることを認めさせ、その無知を自覚させる。混乱に陥った相手は真の知を求め...