民法712条で定められる責任能力と、民法722条2項の適用の前提となる過失相殺能力の解釈を、それぞれ条文の趣旨を交えつつ、比較しながら論じよ。
1、まず、民法712条によれば、「未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。」とされる。 ここでいう「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能」、言い換えれば、自己の行為が違法なものとして法律上非難されるものであることを弁識しうる能力を「責任能力」という。つまり712条によれば、責任能力を欠く未成年の行為は免責されるということである。この趣旨は、自分の行為の意味を認識できない人間に不法行為法の規範を向けて責任を負わせても意味がなく、酷であるからと解する。責任能力は、過失概念が客観化されて行為義務違反と捉えると、本人保護のために政策的に要請される要件とも解されるが、あくまで過失責任主義から論理的に認められるもので、不法行為による帰責の根拠を行為者への非難可能性という点に求めると、非難できるだけの能力(結果を予見し回避するだけの判断力)が必...