Ⅴ.反応中間体
序論
化学反応が起こるためには、エネルギー源が必要になる。反応のエネルギー源として一般に、熱・光・放射線などが用いられる。
エネルギー源が熱の場合には、主として分子の基底状態を経由した反応になる。それに対して光や放射線を用いた場合には、励起やイオン化を引き起こすことが出来る高エネルギーを分子に直接与えるため、基底状態経由の反応とは著しく異なった反応が起こると期待される。
化学反応機構を解明するために、化学反応の中間状態、即ち「反応中間体」を直接観察する方法がある。特殊条件下でしか存在しない反応中間体を直接観察できるようになったことによって、反応機構がより詳細にわかるだけでなく不安定化学種の分子構造の研究にも結びつき、化学反応論・分子構造論の両分野の発展に大きく寄与してきた。
本実験では、ホウ酸、有機溶媒などをマトリクスに用い、光や放射線を照射して反応中間体を作成し、その光吸収スペクトル、電子スピン共鳴スペクトルを測定することにより、光や放射線で生成した反応中間体について理解を深めることを目的とする。
2.実験方法
芳香族分子としてピレンを用いた。...