地域福祉論Ⅰ①

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    資料紹介

    資料の原本内容

     「地域福祉とは何か、理念と基本的概念の整理を行った上で、現状の日本における地域福祉の役割と課題について考察しなさい。」
     1 地域福祉の理念と基本概念
     社会福祉は、「住み慣れた地域社会の中で誰もが人間らしく社会の一員として自立した生活を続けることができるような状態を作っていくこと。」を基本とし、地域福祉とは、地域社会を基盤に地域住民が、主体的に地域社会の様々な生活課題に関わり、住民一人ひとりの自助、住民同士の相互扶助である共助、公的制度の控除の連携・協同によって福祉コミュニティーの構築、住民一人ひとりの生活保障を実現していくことであるとしている。この生活保障とは、日本国憲法第25条の生存権保障の実現を基礎とした、誰もがその地域で住み続けられる地域の構築と健康で文化的な最低限度の生活を地域社会の中に、個々の医師に基づいて具現化し、憲法第14条の法の下の平等、第13条の個人の尊重に則った知策が不可欠であり、公的責任の下、地域住民の相互に第12条、自由及び権利の保持責任を実践していくことが求められ、地域的生活問題で、社会的に排除された人々を受け入れ、正していくことが地域福祉の最も基本的な理念であると言える。
     2000年6月、社会福祉事業が改正され、社会福祉法が公布・施行された。その4条に「地域福祉の推進」が新たに加わり、地域住民の理解と協力を得るよう努力し、住民主体の原則に基づく地域福祉及び、統合的・計画的な社会福祉への転換が推進される事となった。これまでの社会福祉事業法の基本理念、地域等への配慮、経営及び主体、福祉サービス提供の原則、福祉サービス提供体制の確保等に関する、国、地方自治体の責任、及び地域福祉の推進が整備された。地域福祉等への配慮が地域福祉の推進と改められ、形だけでなく地域政策及び社会保障、社会福祉政策全体の動向により、「新たな社会福祉」の在り方として位置づけられ、地域福祉は「社会福祉に関する活動を行う、すべてのものは福祉サービスを必要とする地域住民が地域社会を構成する一因として日常生活を営み、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が与えられ、地域福祉の推進に努めなければならない」と規定した。
     2 地域福祉理念
     地域福祉(活動)には次の福祉理念が据えられる。第一に、常態化(ノーマライゼーション)であり、心身の障害がある人も高齢者も、すべての人が同じ社会の一員として、他の人々と変わらない生活を送ることが正常な人間生活であり、障害があっても地域を基盤として他の人々と共に生きていける社会が正常な社会であり、地域福祉の実践はそれを実現し具体化しようとするものである。第二は、統合化(インテグレーション)という理念で、一人ひとりの生活をトータルに捉え、福祉サービスを統合化し、提供することを通じて個人が主体的に社会との繋がりを実現する事を意味するものとされている。私たち日常生活を支えるのに必要な各種の福祉サービスは、現実には行政の縦割りの仕組みの中で運用され、個人や家族の生活として捉えず、バラバラに提供され生活の改善に効果的でないことが少なくない。これに対し、地域福祉はサービスを利用する住民を主体にし、必要な社会サービスが生活と有機的に結び付くようにすることを目標としている。この理念はネットワーク活動の中で具体化される。第三は、主体的参加(パーティシペーション)という理念で、地域社会には、年齢、職業、思想などを異にし、それぞれ独立した生活を営む人々の集合体で、その地域社会で個人、家族が生活福祉問題を抱えた時、周囲の偏見などによって社会的な孤立を引き起こしたりせず、円滑に福祉サービスを利用できるようにするには、地域の人々の間に相互的な繋がり(福祉コミュニティー)があることが大切で、こうした社会関係作りは外部からの強制ではなく、住民が地域の福祉問題について、自分の事と同じように関心をよせ、進んでその解決行動に参加する事で「住民参加」であると言える。さらに、様々な生活の場で生じる福祉ニーズを早く発見し、効果的に解決しようとすると、制度化したサービスだけでは限界があり、地域住民の協力による、日常的な見守りや支援活動を進めることが必要となる。これにより、主体的参加の理念は、ノーマルな社会の実現と一人ひとりの生活を中心に、統合化された福祉サービスを生み出し、地域福祉を推進するために、地域の組織や団体が基盤となり取り組む場合も多く、これらの地域組織や団体の活動を活性化していくことが、地域福祉を推進する理念の前提でもある。
     3 現代地域社会の役割と課題
     地域福祉は法に基づく制度化された福祉サービスや事業のみによって実現するのではなく、地域住民やボランティア、行政、関係諸機関、社会福祉関係者が協働して実践する事で支えられている。
     これまで、行政が措置による行政処分としての福祉を形成し、社会福祉は生活困窮者の救済処置としての勘が方が強く、住民に偏見を生じさせていたが、現代社会では、国主導から自治体主導への福祉政策を規制することが求められた。
    また近年、社会、経済状況の悪化、少子高齢化や核家族の急激な進行、都市化等の大きな変化によって、これまでは福祉の対象でなかった失業者や社会的援護を要する人への支援、また、引きこもりや虐待、といった新たな社会的課題への対応が早急に求められるようになった。それに加え、人々の生活や価値観の多様化し、伝統的な地域社会が希薄し、高齢者世帯、共働き世帯が増加していることも地域社会に変化をもたらした。
    そのため、地域において政策主体である国や地方自治体に責任を果たさせる原動力として、地域の住民が主体となり、住民のための地域福祉を推進していく、「自分たちが住む街は自分たちで作り上げると言う取り組みの姿勢」が住民に求められ、今日の地域福祉の目的は、これまでの制度を中心とした福祉から、新しい理念の下、専門機関を地域福祉の実践者とし、地域住民を地域福祉の主体者として位置づけた福祉へと転換していくことになる。
    地方自治体の役割には、地域生活支援機能の発揮の必要性が挙げられる。2000年以降、自治体における社会福祉実践は脆弱化し、地域社会における多様な生活問題が事実上放置され、住民の生活は困窮し破綻してきた。競争原理導入により、保健・医療・福祉の連携・統合はおろか同じ領域の各機関史せつさえも分断化され、当該地域における社会福祉機関・施設の連携・協力・協働をかのうとする基盤整備、諸関係機関を含めたネットワーク化に向けて尽力することが自治体の本文として位置づけられる課題である。また、地域福祉推進にあたり、国は、自治体と地域住民のパートナーシップを期待し、住民の主体形成の課題でもある。個々の住民が自分たちの暮す地域の福祉課題に対し、地域福祉の充実を図れるよう自治体との意見交換、福祉活動を通じ積極的に関わり住民参加・生活課題達成への住民の積極的参加という理念は初めて意味をなし、協働のもと、福祉社会体制の構築を図り、地方自治体の特性を活かした創意工夫で、地域福祉計画を広げ発展させていくことが求められる。
     
    参考著書
    『地域福祉の原理と展開』新訂版 2001年7月
    飯野 音一 著
    『社会福祉の理論と実際』 四訂 2007年1月
    新たな福祉社会の構築にむけて
    鬼﨑 信好 編集
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