国会に与えられた唯一の立法機関としての地位について
1 唯一の立法機関としての地位とは
憲法では、国会は、国の唯一の立法機関とされる。その趣旨は、
国民を代表する国会に立法権を独占させることにより、
国民主権という民主主義の理念を徹底することになる。
憲法第41条は「国会は国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である」
規定している。これによって国会は、国の唯一の立法機関とされる。
憲法42条では、「国会は、衆議院および参議院の両議院でこれを構成する」と
して、憲法43条1項では、「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを
組織する」と規定している。
これによって、国会は、国民の代表機関たる地位も与えられているのである。
2 立法の意味とは
立法とは、一般的・抽象的法規範の定位を言う。したがって、国民の権利を制限し
義務を課する法規範のみならず、行政機関の組織・作用の大綱についても、
国会の法律によって定めることとなる。
「立法」には、
国法の一形式である「法律」の定位とする形式的意味の立法と
「法規」という特定の内容の法規範の定立という意味の実質的意味の立法
という意味の2つがあるが、憲法41条における「立法」とは、(2)の実質的意味の
立法をいうと解釈されている。
具体的にはこの立法がどういうことを意味するのか、という点が問題となる。
19世紀の立憲君主制の時代には、国民の権利を直接的に制限し、義務を課する
法律に限られるとされるものであった。
しかしながら現代においては、国民の権利義務に関する事項のみならず、行政機関の組織・作用の大綱についても含むとすることが、議会制民主主義趣旨を徹底するものだと捉えられている。
そこで、およそ一般的・抽象的法規範であれば、すべて議会において定められるべきとされる説が今日の多数説となっている。
3 唯一の意味とは
国会中心立法の原則
国会による立法以外は認められないという原則をいい、その例外としては
議員による規則制定権(憲法58条2項)と、最高裁判所による規則規定権
(憲法77条1項)が認められている。
この原則により、行政機関が命令の形式で独自に立法を行うことは許されず、
法律を執行するための執行命令と法律の委任に基づく委任命令のみが許される。
これが国会中立立法の原則である。
国会単独立法の原則
立法は、国会における手続きのみで完結し、国会以外の機関の関与を必要と
しないという原則をいう。その例外としては、地方自治特別法に対する
住民投票がある。
憲法59条1項では、「法律案は、この憲法の特別の定めのある場合を除いては、
両議院で可決した時法律となる」とされており国会の手続きのみで法律が成立することを定めている。
このような国会中心立法の原則や国会単独立法の原則が導かれるのであるが、
その背後には立法行為については行政機関を排除して国民の代表機関たる国会に委ねる
という国民主権の理念があることを忘れてはならない。