冷却水のトラブルへの対応策をごく簡単に述べています。工場の管理上で重要な管理指標を端的に解説しています。
冷却水系のトラブルへの対応
冷却水系のトラブル
スケールが配管内に付着して、配管が閉塞し冷却水の循環がうまくいかない。
冷却水に藻が発生し、衛生的でない、配管の閉塞や冷却塔でのスラッジ堆積がある。
鉄さびが発生し、配管の腐食や錆こぶによる配管の閉塞がある。
スライム(ゼリー状の菌類の代謝物)が発生し、冷却塔や配管が閉塞する。
バクテリアが発生し、レジオネラ菌増殖の危険性がある。
まずは調査の実施 (水質分析項目などは別表の管理基準を参照)
スケール対策の調査 : 水質分析、配管の閉塞状況の把握、洗浄剤の検討、スケール抑制剤、分散剤の検討。
藻発生対策の調査 : 水質分析、冷却塔充填材の汚れの把握、殺菌剤の検討。
鉄さび対策の調査 : 水質分析、配管内の錆発生状況の把握、錆除去又は腐食防止の判断。
スライム対策の調査 : 水質分析、スライム発生状況の把握、除去対策、殺菌剤、スライムコントロール剤の検討。
バクテリア対策の調査 : 水質分析、レジオネラ菌対策検討。
調査の後、対策のとり方
各注入薬剤の選定検討 : スケール抑制剤、殺菌剤、分散剤、錆除去剤、腐食防止剤、スライムコントロール剤など
薬剤注入の効果の確認
補給水量の調整
冷却塔、コンデンサー、配管に対する措置の検討 :
# 各処の薬剤による洗浄
# 配管や充填材の交換
# 補給水水質の向上、軟化器の設置
# 循環水水質の向上、循環水系フィルターなどの設置
4.冷却水の水質管理に関して
冷却水の管理基準
水質項目 基準値 適切な薬剤による
調整後の基準値 影響 腐食 スケール 基
準
項
目 pH (25℃) 6.5~8.2 6.5~8.7 O O 電気伝導率(25℃)(μS/cm) 800以下 2000以下 O O 塩化物イオン (mgCl/L) 200以下 400以下 O 硫酸イオン (mgSO4/L) 200以下 400以下 O 酸消費量 (mgCaCO3/L) 100以下 400以下 O 全硬度 (mgCaCO3/L) 200以下 700以下 O カルシウム硬度(mgCaCO3/L) 150以下 500以下 O イオン状シリカ(mgSiO4 /L) 50以下 200以下 O 参考
鉄 (mgFe/L) (1.0以下) 1.5以下 O O 硫化物イオン (mgS/L) (検出しない) 検出しない O アンモニウムイオン(mgNH4/L) (1.0以下) 1.0以下 O 他 総有機物量TOC (mgC/L) ― ― 藻、微生物 微生物量 (CFU/ml) ― 1000以下 スライム その他: レジオネラ菌;作業員の健康障害を起こす。栄養源を断つ処理が有効。
各水質管理項目の冷却水系での意味
pH : 炭素鋼配管では、酸性で腐食傾向、アルカリ性でスケールの付着傾向である。銅管では、酸性アルカリ性とも腐食傾向である。
電気伝導率 : 水中の溶解塩類の量を相対的に示す。酸化塩類が多ければ腐食性であり、アルカリ塩類が多ければスケール発生につながる。
塩化物イオン、硫酸イオン : ともに酸化性の塩類なので金属の腐食に作用する。
酸消費量(M‐アルカリ): 硬度成分の量に順じており、スケールの付着傾向を示す。
イオン状シリカ : シリカ成分のスケール付着性を示す。
鉄 : 配管である鋼管の溶出の度合いを示し、管材腐食の指標となる。また錆こぶがスケールを助長する原因となる。
硫化物イオン : 酸化性の強い硫化物は腐食の原因である。
アンモニウムイオン : 腐食の進行と微生物の栄養源の量を示す。
TOC : 水中の微生物や藻類の増殖による代謝物、またその栄養源の量を示す。
調査の参考にしてください。
2009年8月
東都