ロボットが人間と同じように「心をもつ」ということはありえるのだろうか。この問題はロボット工学だけにとどまらず、心理学・哲学・認知科学など多岐の分野にわたって論争が繰り広げられている。金沢大学で現代哲学を専攻する柴田正良助教授は、著書『ロボットの心 7つの哲学物語』の中でこの論点についてさまざまな観点から考察している。
現代の科学技術、特にロボット工学の発展は目まぐるしく、ペットロボやヒューマノイドロボットなどが次々と新世代化してきている。センサーによって人の顔を見分けたり、人の声に反応したり、どんどん生身のペットや人間に近づいていっているようだ。このようにしてロボットがペットに、そして人間にも取って代わる時代になっていくのかもしれない。
しかし、いくらロボットが人間に近づいてきているからといって、ロボットが人間と同じように「心をもつ」ということはありえるのだろうか。この問題はロボット工学だけにとどまらず、心理学・哲学・認知科学など多岐の分野にわたって論争が繰り広げられている。金沢大学で現代哲学を専攻する柴田正良助教授は、著書『ロボットの心 7つの哲学物語』の中でこの論点についてさまざまな観点から考察している。
本書のプロローグは、「サラの話」から始まっている。ある星で転送機に入ったサラは分子単位に分解され、読み取られた「設計図」によって遠く離れた地球でまた再構築されるというストーリーだ。サラの記憶も、地球に残してきた娘ネフィーに対する愛情もそのままである。この場合、二人のサラは同一であるといえるだろ...