国文学講義Ⅵ(現代)②

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    国文学講義

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     日本の戦時下は、満州事変を発端に日中戦争で本格的になり、やがて太平洋戦争に突入するまでの昭和十年代を表す。人々の関心は次第に民族心を掻き立てられ、戦争へと興味を示していった。
     当初の文壇では、満州事変に無関心だった。マルクス主義文学やモダニズム文学が依然主流であった。また、民族主義・浪漫主義の源となる古典をこよなく愛するロマンチシズムが、古典文学の見直しを主張していた。保田与重郎は『コギト』を発行し、亀井勝一郎や中谷孝雄らが『日本浪漫派』を創刊することにより、その目的を鮮明なものとしていた。
    そのような状況を一変させたのは、満州事変後の昭和一二年、北京郊外で発生した日中両国における軍事衝突であった。日本の強引な満州国建国が中国側の反発を買い、また国際的非難を浴びていた。これにより日本政府は戦線体制を強化し、国民にその緊張感を投げかけていった。文学界では、雑誌会社が戦地に文学者を派遣し執筆させた現地の状況報告が話題となり、新聞業界もこぞって戦地へ向かうようになった。
    しかし、芥川賞を受賞したばかりの新人、石川達三の『生きている兵隊』が、本人と意図とは裏腹に描写の一部に問題があるとして...

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