刑法問題・答案 身分犯 非公務員が収賄罪に加功した場合について
答案
1 結論
非公務員が収賄罪に加功した場合、身分はないが、収賄罪の共犯となる。
2 身分犯とは
意義
構成要件上、行為者に一定のある身分のあることが必要とされる犯罪を
いう。
種類
ア 真性身分犯
行為者が一定の身分を有することにより、犯罪が構成されるものをいう。
イ 不真性身分犯
行為者が一定の身分を有することにより、法定刑が加重または減刑される
ものをいう。
3 共犯と身分について
真性身分犯に非身分者が加功した場合
刑法65条1項は、「犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加功したときは、
身分のない者であっても、共犯とする」と規定している。
この規定は、真性身分犯に関するものと、判例・通説で解されている。
例えば、公務員が主体になる収賄罪(刑法197条)という真性身分犯に
非公務員が加功した場合には、当該非公務員も真性身分犯の「共犯」となる。
この「共犯」の意義に関して、幇助犯や教唆犯のほかにも共同正犯も含むか、
という問題があるが、判例では「刑法65条1項は、共同正犯、教唆、幇助
のいずれにも適用がある」と述べている(大判大4.3.2.)。
不真性身分犯に非身分者が加功した場合
刑法65条2項は、「身分によって特に刑の軽重があるときは、身分のない者
には通常の刑を科する」と規定している。
通説・判例では、この規定は、不真性身分犯に関するものとされている。
例えば、常習者が主体となる常習賭博罪(刑法186条1項)という
不真性身分犯に非身分者たる非常習者が加功した場合には、非常習者には、
通常の単純賭博罪(刑法185条)の共犯が成立し、その刑が科せられる
(大判大2.3.18)。
4 収賄罪
意義
公務員が、職務に関して、賄賂を収受等する罪をいう。
法的性格
真性身分犯である。
5 設問の検討
収賄罪は公務員によって犯されるものであるが、収賄罪に非公務員が加功した場合、
収賄罪の共犯となる。非公務員が幇助すれば、収賄罪の従犯となり、教唆すれば、
収賄罪の教唆犯となり、共同正犯の形態で加功すれば、収賄罪の共同正犯となる。