憲法判例の拘束力について

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    筆者は、父が弁護士という職業に就いているためか、昔から、多くの憲法や法律などに関する著書に触れる機会があった。その中でも、筆者が特に気に入って読んだのが、今はお亡くなりになられた、芦部信喜先生の記した『憲法判例を読む』という本である。この本は、市民を対象にした憲法の講演が元になっており、それゆえ、語り口も優しく、著者の学説が具体的な判例をベースにして書き綴られ、憲法学の要が理解しやすくなっている。学説の内容と判例の特色が対比して分かりやすく書かれているため、著者の判例に対する考え方をよく知ることができた。内容としては、公共の福祉から内在制約説、その判断基準となる二重の基準論、と流れるように講義が展開しているかたちで、判例理論と学説の違いが実に明快に説明されている。特に違憲審査基準の動向について詳しく書かれており、この本の欄外には、審査基準の整理として有名な「図」が描かれている。しかし、審査基準は、ベースとなるべき目的手段審査に比べて、より厳格な審査をすべきか、より緩やかな基準でよいかという枠組で考えるべきものであることを、前提として理解しておく必要があるようにおもえる内容であった。
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