『平和構築と法の支配』を読んで
第二次世界大戦後、特に冷戦後の現代世界において、地域紛争は頻発化している。こうした地域紛争やその他の人道的危機に対応するためには、人道支援はもちろん、さらに進んで紛争後の社会に永続的な平和を構築していく必要がある。かかる平和構築に際し、国際社会に生きる我々にはいかなる支援が出来るか。
この問いに対し、私は「法の支配」という観念が有効なアプローチとなりうると考える。
紛争が勃発している地域では、国家が正常に存在しない、あるいは機能不全に陥っているという事態がよくある。典型例としては、政府が一つの利益集団しか代表しない結果、他の集団との深刻な対立をもたらしたり、独裁的な権力行使によって多くの人々の憎悪の対象になっている場合が挙げられる。こうした紛争地域では、武器を片手に権力を行使する集団が、法規範を無視した状態を作り出している。この状況を脱するには、新しい武力集団を持ってきて対抗させるだけでは足りない。「法の支配」を確立する-すなわち法原則に従った社会制度を築き、公権力を適正なものにし、恣意的な「人の支配」を排すことで、誰もが安心して暮らせる社会が実現...