性善説と性悪説について
1 性善説と性悪説
孟子の時代に人間の本性についての問いが争点となった。その代表的な思想が「性善説」と「性悪説」である。
孟子の「性善説」は「人間は生まれもって善である」と説くものである。例として、もし赤ん坊が井戸に落ちそうなところを見かけた時、誰もがはっと驚き助けようとするのは、人には皆、惻隠(憐れみ)の心があるからだという。
対して、荀子の「性悪説」は「人間はもともと悪である」という考えを持つ。これは『人の性はもともと利益を好むはたらきがあり、それに従うので、争い、奪い合いが生じ、譲り合いがなくなる。そして生まれながらにして、ねたみ、憎しみのはたらきがあるから、傷つけ合いが生じ、誠実さがなくなる。だから教育を受けて感化し礼儀を得なければならないのだ。』と説いている。
2 対立構図と実態
同じく孔子の思想を学び、自身の思想を展開させた二人だが、時代的には孟子が性善説を述べ、これに対して荀子が反論したという順番になる。そのことから分かるように、荀子は意識して孟子の反対論を立てたのであるから、この二説は明らかな対立関係にあり、構図としても対照的で非常によくできたも...