刑訴法問題・答案 同一被疑事実による再逮捕
問 同一被疑事実による再逮捕について述べよ。
答案
1 原則
逮捕による身柄拘束機関が厳格に規定されていることから、再逮捕は原則として
許されない。
刑訴法は、逮捕に伴う身柄拘束について、厳しい時間制限を設けている
(刑訴法203条ないし206条、211条、216条)。にもかかわらず、同一事実による
再逮捕が自由に許されるとなれば、時間制限が事実上、無意味となってしまう。
そこで、同一の被疑事実による同一の被疑者逮捕は、一回しか許されないとする
原則が導かれることになる(一罪一逮捕の原則・逮捕一回の原則)。
2 例外
いかなる場合であっても、同一被疑事実による再逮捕が許されないとなれば、
不合理な事態ともなる。
刑訴法上も、再逮捕を想定した内容の規定もおいている。そこで、合理的な理由が
あって、不当な逮捕の蒸し返しとは認められない特別な事情がある場合には、例外的に
再逮捕が許されると解されている。
その場合に、現行犯逮捕の要件を満たしていれば、現行犯逮捕することもできるし、
緊急逮捕の要件を満たしていれば、緊急逮捕をすることもできる。
あるいは、新たに令状の発付を受けて逮捕することもできる。
3 合理的な特別な事情がある場合
逮捕後の引致途中で被疑者が逃走した場合、②身柄拘束の必要は無いとして
釈放したものの、再三の出頭要求に応じず、逃亡、証拠隠滅のおそれが生じた場合、
証拠不十分で釈放し、その後に新たな証拠が発見され、かつ、逃亡・証拠隠滅の
おそれがあり、任意捜査では捜査の目的が果たせない場合、④通常逮捕すべきところ
を緊急逮捕したというように、逮捕の実質的要件は十分に備わっているものの、単に
逮捕の種別を誤ったという場合などがある。