中国延辺朝鮮族自治州に関する考察
中国吉林省には、北朝鮮・ロシアと国境を接する延辺朝鮮族自治州が存在する。朝鮮族の移住の歴史的背景に関しては、自然災害から逃れて朝鮮半島から移住してきた歴史や、清国による勢力争いとしての移民奨励策、満州事変前後期における日本の移民奨励策が関連している。こうした意味で延辺は、各国の近代化の過程の中で勢力範囲を争われた現場であり、結果勢力争いに勝利した日本に抵抗する抗日パルチザンとしての場でもあった。このような歴史的背景を経て1952年に延辺朝鮮族自治州が成立、55年の自治州化を経て現在に到っているが、1945年後には国共内戦、朝鮮半島の分断、文化大革命など、イデオロギーの対立とは不可分な現場として、一方では現在国連開発機構が主導する豆満江開発に見られるように、東アジア経済の中心となる自由貿易港の場としての性格をも、延辺は持ち合わせている。
このような歴史を持つ延辺朝鮮族自治州に居住している朝鮮族は年々減少傾向にあり、今では漢族人口が上回っている状況である。2010年3月には延辺朝鮮族自治州を延吉市にしようという動きも出てきている。こうした現状のなか、実...