六月祓
古く宮中では、六月晦日に内裏の朱雀門において、罪と穢れを除去するための大祓いという祓いが行われた。これを六月祓という。川祭を兼ねた夏祭りの一種で、無意識の間におかした神への罪と科を祓うという意味である。
一、起源
六月祓は天武天皇(六三一〜六八八)の頃より始まったとされ、七〇一年設定の『大宝律令』に「国民が犯した罪を除き去るための大祓」と定められている。平安時代には六月の晦日に、宮中で祓を受けた祓物を大川に流し、すべての人が犯した罪を祓い清めた。百人一首の一句
風そよぐ ならの小川の 夕暮れは
みそぎぞ夏の しるしなりける
はこの六月祓の様子を詠った歌である。
六月祓の方法のひとつである「茅の輪くぐり」が始められた時期は定かでないが、『備後風土記逸文』で北海の神・武塔神より命じられ、茅の輪を腰につけた者が厄を逃れることができたという神話より、用いられるようになったのが由来とされている。
祓の行為自体は『古事記』のイザナミノミコトの部分に禊祓に関する記述があり、古代以前より行われていたと考えられる。『古事記』によれば「イザナミノミコトが、死の穢れに触れたために、筑紫の日向の橘...