紫式部日記 誕生の行事
『紫式部日記』は紫式部が一条天皇の中宮彰子に女房として仕えていた際、宮廷での日常生活や年中行事、儀式等の記録と人物批評・人生観について述べた消息文を集めた日記である。
この論文では敦成誕生に関し行われた行事(誕生に係る行事)とそれ以外の年中行事を考察していく。
一、『紫式部日記』
『紫式部日記』は寛弘七年(一〇一〇年)ころ完成した。作者が仕えた一条天皇の中宮彰子の宮廷の日常や敦成親王誕生にかかる儀式・行事等と,その間の作者の感懐を記したものである。『紫式部日記』は女房日記(女房がその立場から書き記した主家のための日記)の性格をもち、宮仕えの苦しさや他の女房の批評の記述があるが、中心は主家の繁栄を象徴する祝事・賀儀の記録であり、主家の賛美である。また、紫式部が娘である賢子の将来(宮仕え)のため、こころをくだいて書いたものともいわれている。
二、紫式部
紫式部は平安時代中期の女性作家及び歌人で生没年は不詳である『源氏物語』、宮仕え中の日記『紫式部日記』を著した。藤原宣孝と結婚し藤原賢子(かたいこ・けんし)を生んだが、夫と死別し、寛弘二年ころ(一〇〇五年)より、一条天皇の中宮・彰子の女房と...