【事案】
妻Aは、夫Bと激しい口論をしたあとで、ライトのついていない寝室に入ってきた。そこで、かねてAは折あればBを殺そうという計画をし、用意しておいたピストルを取り出した。そこへBが入ってきてAを抱きしめ『仲直りの口づけ』をしようとかがみ込んだので、Aはピストルを発射し、Bを殺した。しかし、実は、暗くてAは気がつかなかったが、Bもナイフを用意し、『仲直りの口づけ』にことよせてAを殺そうとしていた。Aの罪責はどうなるか。
-検察側の立場から-
問題の所在
今回の事案においてAには防衛の意思はない。それでも、Aの行為は「防衛するため」(刑法36条1項)といえるか。正当防衛の成立には「防衛の意思」が必要かどうかが問題となる。違法性の実質が、結果無価値のみにあると考えれば、行為者の内心には着目しないことになるから、正当防衛の成立に防衛の意思は不要となる。一方、違法性の実質について、結果無価値のみならず、行為無価値をも加味して二元的に考えれば、行為者の内心にも着目することになるから、正当防衛の成立には防衛の意思が必要となるのである。
学説・判例の整理
【学説】
必要説
・違法性...