1.初代ローマ皇帝アウグストゥスは、不安定な共和制にピリオドを打ち、元首政を開始したが、形式の上では共和制的支配を崩さずに「法による支配」を確立した。このような社会の中で、法学は国家権力と結合し、最盛期を迎えることとなった。
この時代の法学を特徴づけるものは、解答権の制度と、学派の対立である。解答とは、「特定の学者に付与された、解答を与えることのできる地位」のことである。しかし、この解答権を持つ法学者の解答も、なんら法的拘束力を持つものではなかった。
学派の対立については、アウグストゥス帝時代からハドリアヌス時代まで続いた。学派の対立とは、共和主義的なプロクリアヌス学派と体制派のサビーヌス学派の対立であった
が、具体的な法律問題での立場の違いによるもので、師弟関係を重視するローマ的なやり方に基づいており、理論的・思想的な背景は重要ではなかった。
2.その後の五賢帝の時代に、解答権が制度的に完成するに至る。つまり、前時代においては、法的拘束力を持たなかった法学者の解答は、解答権を持つ法学者の意見が一致することによって法としての効力を持つこととなった。このように、法学者の学説は「学...