刑事訴訟上の自由心証主義は、主として証拠の証明力(証拠価値)の判断を裁判官の自由な判断に委ねることを意味する。
自由心証主義は、法定証拠主義が自白偏重の弊害をもたらし、多くの拷問裁判の悲劇を生み出す原因になったことへの反省と、裁判官の理性を尊重する合理主義にもとづく原則であり、刑事証拠法制は、歴史的に法定証拠主義から自由心証主義へという方向で近代化の歩みをたどってきた。
日本において現在、刑事訴訟法318条は、「証拠の証明力は、裁判官の自由な判断にゆだねる」として自由心証主義を採用する。この原則は、証拠の証明力の評価の判断を、裁判官の自由な判断に委ね法律上の制約を設けないとするものである。これと対比されるものとして法定証拠主義がある。これは、近世初頭のヨーロッパ糾問主義訴訟手続において採用されていた原則で、ここでは、証拠の証明力に対して法的規制がなされ、一定の法的証拠が存在する限り裁判官は心証のいかんにかかわらず有罪に認定をしなければならない(積極的法定証拠主義)とか、一定の法的証拠がなければ有罪の認定をなしえない(消極的法定証拠主義)とされていた。その際の法定証拠としては、2名以...