なお、最高裁判所裁判事務処理規則12条・14条は個別的効力説を前提にしているとされている。すなわち、同規則12条で、違憲の裁判をするには「8人以上の裁判官の意見が一致しなければならない」と定め、これを受けて同14条では、「第12条の裁判をしたときは、その要旨を官報に公告し、且つその裁判所の正本を内閣に送付する。その裁判が、法律が憲法に適合しないと判断したものであるときは、その裁判所の正本を国会にも送付する」と定めているところ、この前提として、少なくとも違憲の裁判が直ちに一般的効力をもたらすとの考えは採用されておらず、国会や内閣による対応措置がなされることによりはじめて一般的効力が生ずるという考えが採用されているのである。
この点、反対説たる一般的効力説の立場では裁判所に法令を廃止したと同様の効力を発する権能(消極的立法作用)まで認める結果になるが、とすると、41条が立法権を立法機関たる国会に独占させた憲法の体系を破壊し、ひいては司法権優位の三権分立構造と反することになってしまうので、妥当でない。
法令違憲の効力について
思うに、81条は「司法」の章に規定されているところ、司法とは伝統的に具体的な権利義務に関する争い、または一定の法律関係の存否に関する争いを前提とし、それに法令を適用して紛争を解決する作用であり、違憲審査権はその作用に付随するものとして同条に明記されたと解される。また、81条はアメリカ法に由来するものであるところ、アメリカは具体的審査制が採られている。したがって、我が国の違憲審査権も具体的審査制を採っているものと解される。とすると、違憲審査権について具体的審査制を採っている以上、違憲判決の効力は当該事件・当事者に対してのみ違憲法令の適用を排除する範囲で認められるに過ぎ...