2010年3月期決算において日本電波工業(以下、NDK)がIFRSによる連結決算書を公表した。本年より任意適用が可能となってからIFRS適用第1号となった。この決算報告が世間に与えた影響は大きく、今後他社が追随する可能性がある。本稿では、この事例を基にIFRSが企業に与える影響を考察する。
IFRSが管理会計を変える!
≪はじめに≫
2010年3月期決算において日本電波工業(以下、NDK)がIFRSによる連結決算書を公表した。本年より任意適用が可能となってからIFRS適用第1号となった。この決算報告が世間に与えた影響は大きく、今後他社が追随する可能性がある。
我が国では上場企業の連結財務諸表に対するIFRSの強制適用の判断の時期について2012年を目途に、2015年ないし2016年の強制適用を判断することになっている。現在、多くの子会社を抱える上場各社はIFRS適用の準備を開始しており、IFRSの導入に伴う影響度分析や適用のための課題抽出等の何らかの作業を進めている。例えばNECでは、2013年3月期の適用を目標に経理の専任者9人を迎え入れ、2009年11月に社内のプロジェクト・チームを発足させた。しかし川野(2010)は、「現時点(2010年3月)ではIFRSに基づく連結財務諸表作成を目的とした、すなわち財務諸表としての準備作業に止まり、IFRSに準拠した管理会計制度や経営管理制度の検討には至っていないのが現状である。」と指摘しており、IFRS適用の準備は財...