『万葉集』は舒明期から淳仁期までの約130年に渡って詠われた現存最古の歌集である。20巻からなるこの歌集は、約4500首に及ぶ様々な歌が詠われている。一般的に時代は4期に分けられており、作品は時代の風潮により特徴がみられる。代表的な歌人とその歌風について時代別に述べてみたい。
第1期は舒明天皇即位の年から壬申の乱までの44年間とされている。
巻1の1に伝承の時代の歌として雄略天皇の歌が飾りとして置かれ、続いて巻1の2で舒明天皇の「天皇香具山に登りて望国したまふ時の御製歌」が詠われている。34代目として即位した舒明天皇は、この歌で国家の繁栄を願う儀礼的な歌を壮大に詠んでいる。
またこの後、巻1の3として中皇命の国土経営を想う歌が詠われている。単なる儀礼の歌にとどまらず女性らしさを兼ねて歌われている。定かではないが、この中皇命の歌は舒明天皇の皇后であった斉明天皇の歌ではないかとの説がある。
また38代目に即位した天智天皇は大化の改新をなしとげた後、即位し権力を一気にまとめ上げ、律令国家を推進した。しかし歌風には人間らしさを感じさせるものが多い。同母兄である後の天武天皇と額田王との...