「発話行為」(speech act)とは、言葉を用いてなされる行為のことである。日常使われる言葉では、表面的には真偽の判断を可能とする陳述の形式をとる発話が、実際には事実に関する情報の直接的な伝達の意図を伴わず、その発話自体がある行動を喚起したり、その発話を介し何らかの間接的な行為を促したりする事例がみられる。
a. The dog is in his house.
b. The earth is round. (山梨正明『発話行為』)
a. I name this ship the Queen Elizabeth.
b. I bet you six pence it will rain tomorrow.
c. I give and bequeath my watch to my brother.
(1)(2)はいずれも平叙文であるが、(1)は外部世界、心理的な内面世界などに関する記述、描写の機能を担い、真偽の判断を可能とする「叙述文」(constatives)である。一方、(2)はその発話自体が命名、贈与等の行為を成立させる機能をにない、これらの発話に関しては真偽の判断を問うこと...