横領罪と窃盗罪の成否(占有を肯定する場合)
一 Xは借金の返済に充てるため、管理を任されていたSの金庫から売上金を持ち去ろうとした。ところが、店長Aに発見されたため、Aから逃れるためAをバールで殴打し死亡させた。
本問では、まず窃盗罪と横領罪のどちらが成立するかについて売上金の占有の有無を検討する。次に、金庫やガラスの破損について器物損壊罪や建造物損壊罪の成否、そして、罪証隠滅を目的としたAの殺害について検討し、Xの罪責を明らかにしたい。
二(1) まず、XはSの売上金を占有していたといえるか否かが問題となる。なぜなら、自己の占有に属する他人の物を領得する行為は横領罪、他人の占有に属する他人の物を領得する行為は窃盗罪にあたるからである。
この点、窃盗罪における「占有」とは、他人の排他的支配を侵害したか否かという意味での占有、すなわち、侵害の客体としての占有をいう。とすれば、窃盗罪における占有は、事実上の占有を指し、観念的な占有である法律上の占有を含まない。
本問では、Xはホールの運営、レジの管理を任せていた正規の従業員であることから、Xは店の管理全般を任されていたといえる。とすると、店長Aは現実的には管理を行っていないため、Xに事実上の占有があるといえる。
確かに、XはSの店長Aから管理を任せているだけなので、SまたはAにも占有があるとも思えるが、Aは週に一回売り上げの報告を受けていただけであり、金銭の受け渡しはないことから、間接的な占有であり、窃盗罪における事実上の占有とはいえない。
横領罪と窃盗罪の成否(占有を肯定する場合)
一 Xは借金の返済に充てるため、管理を任されていたSの金庫から売上金を持ち去ろうとした。ところが、店長Aに発見されたため、Aから逃れるためAをバールで殴打し死亡させた。
本問では、まず窃盗罪と横領罪のどちらが成立するかについて売上金の占有の有無を検討する。次に、金庫やガラスの破損について器物損壊罪や建造物損壊罪の成否、そして、罪証隠滅を目的としたAの殺害について検討し、Xの罪責を明らかにしたい。
二(1) まず、XはSの売上金を占有していたといえるか否かが問題となる。なぜなら、自己の占有に属する他人の物を領得する行為は横領罪、他人の占有に属する他人の物を領得する行為は窃盗罪にあたるからである。
この点、窃盗罪における「占有」とは、他人の排他的支配を侵害したか否かという意味での占有、すなわち、侵害の客体としての占有をいう。とすれば、窃盗罪における占有は、事実上の占有を指し、観念的な占有である法律上の占有を含まない。
本問では、Xはホールの運営、レジの管理を任せていた正規の従業員であることから、Xは店の管理全般を任されていたと...