AはBと常日頃より不仲の関係にあったが、某日ささいなことから喧嘩となり、組んずほぐれつの乱闘となった。体力に勝るAは、自己の勝利を確信しBを軽くあしらうつもりでいたが意外にもBが強かったので、すっかり本気になってBを押し倒しその上に馬乗りになって両手でBの顎部を強く圧迫した。そのため特異体質(心臓肥大と高度の脂肪変性)であったBはその場でショック死した。Aの刑事責任はどうか。
中央大学 通教のレポート。 C評価でした。
参考文献 大谷實 『新版 刑法講義総論 第2版』(成文堂)
AはBと常日頃より不仲の関係にあったが、某日ささいなことから喧嘩となり、組んずほぐれつの乱闘となった。体力に勝るAは、自己の勝利を確信しBを軽くあしらうつもりでいたが意外にもBが強かったので、すっかり本気になってBを押し倒しその上に馬乗りになって両手でBの顎部を強く圧迫した。そのため特異体質(心臓肥大と高度の脂肪変性)であったBはその場でショック死した。Aの刑事責任はどうか。
刑法38条1項は、「罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。」としている。故意がなければ、原則として犯罪は成立しないのである。Aには殺人の故意がなかったことから、殺人罪は成立しないと思われる。
それではAに刑法205条の傷害致死罪が成立するか。Aの行為とBの死との間に因果関係が認められるならば、傷害致死罪が成立することになるが、Bの特異体質が、Bの死に大きく関係しているため、これが問題となる。
因果関係が認められるためには、まず、その結果が行為者の実行行為に基づいて生じたこと、すなわち、その実行行為がなければその結果は生じなかったという事...