均衡予算の原則とは「その年の支出はその年の収入で賄わなければならない。また収入は年々蓄積されるままに任してはならない。換言すれば、収入と支出とは一年一年均衡しなければならない」というものである。わが国の予算決定制度上においても、「各会計年度における経費は、その年度の収入を以て、これを支弁しなければならない」と財政法にて定められてある。
ではこの均衡予算の考え方が、時代と共にどのように変化を遂げてきたのかについて述べたい。均衡予算の原点はドイツのアドルフ・ワグナーの財政選択論の中に存在する。ワグナーは「国家活動の範囲及び行政機構がただしく決定され、経常費と経常収入とが適度のものであると考えられる場合には、すくなくとも経常費の総額を経常収入によって充足するという原則を遵守することによって、財政的、国民経済的に大きな利益がもたらされる」と唱えているのである。更にワグナーは租税と公債を比較検討する際に、公債を遊資・外資・国内投資の3種に分け、固有の政治費の場合は遊資・外資を起債する方が課税より効果的であるとし、国家経済的投資の場合のみ国内投資によって充足してもよいこと、そしてどの場合も経常費に...