w0775 社会福祉援助技術Ⅱ①

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    資料紹介

    資料の原本内容

    「ケースマネジメント(ケアマネジメント)の目的と展開過程、ソーシャルワークとの関連について述べよ。」
    1、ケースマネジメントの目的
     日本におけるケースマネジメントは、1990年に設置された在宅介護支援センターにおいて試行的に始められ、その後2000年4月から施行された介護保険制度により「ケアマネジメント」という用語が使われ、介護予防支援や障害者自立支援法(2005年10月設立)の相談支援でも使用されるようになる。
     介護保険におけるケースマネジメントの手法は、サービスの効率的な提供とともにコストコントロールを特徴とし、公費の抑制を目的としている。しかし、コストコントロールに主眼を置いてしまうと、支給限度額の範囲でサービスをやりくりする技法に変質してしまう。介護保険をはじめとする、制度に限定されたケースマネジメントを行う場合、対象者を中心とする立場に立った専門性が重要であり、対象者の社会生活に焦点をあて、対象者自身がその生活を自己決定していく事を側面的に援助していくことである。
     ケースマネジメントの目的は、対象者が安全で安定した日常生活をより自律的に自分らしく維持できるよう支援する事で、基本的要件は、対象者と適切なサービスを調整する事である。日常生活における健康の維持・促進・疾病の予防・管理を医療や保健・福祉の立場から見守り、心身機能の維持・改善を行い、基本的生活ニーズが充足されるよう、家族やサービス提供者との連携を図ることである。また、生きがいや意欲を引き出し、社会的参加が促進されるよう個々に合わせた支援を選択、実施する事などが含まれ、これらの支援は、社会生活を営む事で保障されている支援である事を前提に対象者と接した時点から始まり、解決に向けてあらゆる資源を活かしながら包括的・統合的に支援する事である。
    2、ケースマネジメントの特徴
     ケースマネジメントの特徴の一つは、利用者の生活全体を視野に入れてニーズを把握し、何らかの社会的不利を抱える人々にニーズを満たすため、福祉的制度・機関といったフォーマルな資源と個人・地域サービスをそう・ボランティア等の人間関係といったインフォーマルな資源を統合的にコーディネーションし、提供することである。二つ目は、多様なサービスの重複や無駄をなくした、効率的なサービスの提供である。三つ目は、長期的で慢性的なクライエントに対して、常にモニタリングを繰り返し、サービスの継続性を保障する事である。 
    3、ケースマネジメントの展開過程
     ケースマネジメントはチームで支援を行うチームアプローチで、共通のケース目標に向かい、クライエント別に専門職のチームアプローチを推進し、保険・医療・福祉等の連携を強化しながら価値、知識、技術を一体的に確保し、利用者の意向に沿った生活が実現できるよう、個々のケースマネジメントを実施する。クライエントの生活機能向上に向けてクライエントの意欲を引き出し、内的資源であるセルフケアと社会資源のフォーマルケア、インフォーマルケアを統合、活用し、クライエントの欠落部分を補うだけでなく、潜在的なセルフケアを高める支援が重要であるとされる。
    ケースマネジメントは、利用者、家族、支援者等の合意によって目標を設定し、支援方針、支援計画を作成し、モニタリング等の評価を行う中で継続した支援を行う事である。その過程は、①入り口②アセスメント③ケースの目標設定とケア計画の作成④ケア計画の実施⑤クライエントおよびケア提供状況についての評価及びフォローアップ⑥再アセスメント⑦終結、である。①は主としてケースの発見、スクリーニング、インテークが行われ、②ではクライエントを社会生活上の観点から、様々な問題点やニーズを査定し、身体・心理・社会環境状況等の生活課題を明らかにし、クライエントとコミュニケーションを図りながらクライエントを理解する事が重要とされる。また、コミュニケーションが図れないクライエントの場合、本人に了承を得て、家族や医療機関等の専門家から情報を得たり、本人の行動や仕草から感じ取ることもアセスメント情報になる。③は、アセスメントを基に、ケース目標を計画し、個々の課題をクライエントに即した個別化された計画を作成し、クライエントの社会生活上での問題について望ましい援助の種類、供給主体、必要な時間、回数が提案される。④は質の高いサービスを円滑に受けられるようケア計画を実施し、サービス事業者でチームワークを作り上げ、ケース目標をサービス担当者会議等で共有化し、自分たちの提供するサービスと他事業者のサービス提供を把握し、協働してクライエントを支え合うことが重要とされる。⑤はサービスやサポートが円滑に提供されているか、クライエント自身の心身や社会状況の変化等により、ニーズが変化していないかモニタリングする必要がある。⑥クライエントの状況変化で在宅生活の維持が困難である場合、再アセスメントを実施し、ケアプランを修正し、ケースマネジメント過程の循環を繰り返していく。⑦の終結は、クライエントの死亡、施設入所等で終結したり、入院による一時中断もありえる。このように、ケースマネジャーは、クライエントが在宅生活を継続していけるよう支援し、クライエントの状況変化に合わせた、社会資源調整・変更し支援する役割を担っている。
     4、ケースマネジメントとソーシャルワークとの関連
    ケースマネジメントとソーシャルワークは、利用者を中心とした援助技術という共通性をもち、問題解決のために本人の本来持つ力(内的資源)を発揮し、た、生活モデルのアプローチであることも共通している。援助における価値や倫理、専門知識、技術について、また援助過程や構造においても共通性がある。アボドガシーやソーシャルワーク・アクションなどは、ソーシャルワークで欠かせない領域であり、ケースマネジメントにおいても重要なものとして位置づけられている。
     つまり、ソーシャルワークと言う総論的実践概念の一部を構成する各論的実践概念がケースマネジメントであり、専門職として必要不可欠なアプローチの方法である。
    ケースマネジメントを必要とする利用者は、複合的なニーズを抱え、各種サービスや地域の社会資源を有効に活用するための調整を行う事が必要である。自分らしい生活を実現できるように援助するというエンパワメント、ストレングスの視点に立脚し、アボドガシーを果たす事はソーシャルワークで欠かせない領域であるが、ケースマネジメントでも重要な役割であると位置づけられている。また、生活全体のニーズにアプローチするソーシャルワークの共通の基盤があってのケースマネジメントであり、ソーシャルワークは「人々がその環境と相互に影響し合う接点に介入する」ことを基礎とし、ケースマネジメントが目指している事と合致し、ケースマネジメントがソーシャルワーク実践の中核機能を占めていると言われている。ケースマネジメントは人々と社会制度を結びつける事を中心とし、人々の内的な発展や社会制度の改善していく事に視点を置き、実施していく独自性を持っている。ケースマネジメントでは、ソーシャルワークの様々な技法の中から、社会資源を有効活用する事、クライエントを中心とした目標設定し、計画的支援を行うこと、支援者が連携する事などを必須の手法として発展してきた。これらの手法をケースマネジメントの実践と理論により検証する事で、ソーシャルワークの理論そのものの発展が期待できるのではないかと考える。
    参考著書
    『相談援助の理論と方法Ⅰ』
    中央法規 2009年3月
    社会福祉養成講座編集委員会
    『ソーシャルワーカーとケアマネジャーのための
    相談支援の方法』
    久美株式会社 2008年4月
    狭間 香代子 編著
      社会福祉援助技術Ⅱ  
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