1.「ヨーロッパにおけるローマ法の継受」とは、ローマ法がヨーロッパの殆どの国において、
直接適用可能な法として受容されたことをいう。ここにいう「ローマ法」とは、ローマ建国から
ユスティニアヌス法の立法までの法のうち、私法分野(ローマ私法)を指す。以下、本レポート
では、ヨーロッパ各国のうちドイツ・フランス・イングランドを取り上げ、3 国のローマ法継受の
様相を概観し、検討する。
2.(1)ドイツは、962 年以降神聖ローマ帝国の中核を形成し、皇帝理念のもとにあった。また、
ドイツは、学識法教授の空白地帯でもあった。そして、大学設立後も、その法学は主として、
イタリアで発達したローマ法やカノン法(教会法)などに、ほぼ全面的に従うものだった。
15 世紀になると、ドイツでも商品の流通や人的交流が盛んになり、共通の法が必要とされ
た。しかし、金印勅書以降、領邦国家の自立化・主権国家化が進んでおり、各地の慣習法を
集約して統一法を制定するには、皇帝の権力は脆弱であった。
こうした中、トルコ帝国によるヨーロッパ侵略が始まり、弱体化した帝国の改革が急がれた。
そして、マクシミリアン 1 世の帝国改...