1.はじめに
1990年代半ば以降、「情報化社会」という言葉が広く用いられるようになった。情報化社会とは、工業社会の後に到来した情報そのものを生産する社会のことである。近年における情報化の進展は目覚ましく、インターネットや携帯電話の普及によって国民生活の利便性が向上すると同時に、情報関連技術が社会の根幹を支えるインフラとしても機能するようになった。こうした変化に伴って、インターネットやデジタルネットワーク上に「サイバースペース」が新たなコミュニケーション空間として形成されつつある。このことは伝統的なコミュニティ概念を変化させており、「コミュニティ」とは何かが今改めて問い直されている。
ここでは、コミュニティ内部の関係――つまり、コミュニケーションを中心にコミュニティ概念をとらえたデランティの議論を基に、情報化社会におけるコミュニティの在り方を考察していく。
2.社会とコミュニティ
イギリスの社会学者ジェラード・デランティは、著作『コミュニティ』の中で、グローバル化の進展を背景に、社会的実践ではなく象徴的な構造としてコミュニティを論じている。
現在、私たちはコミュニティに...