1. 経済学では長い間、一人の生活者を労働者と消費者に分身させ、切り離した。(図1)分身した一方の消費者はもっぱら抽象的な市場に向かい、経済学を科学するためであって、必ずしも生活者のためではなかった。経済学が現実から遊離する一つの大きな要因がここにあったといえよう。
結局、成熟社会の生活者は、その社会が充実するにつれて、消費や生産を含めて、生活をより一層トータルに、質的に営む人間となる。(図2)
成熟社会の生活者は、第1に大量の情報と質の高い情報を吸収し、情報を選択してライフスタイルをソフト化し、生活の質を高める。第2に、生活の量的充足から質的充実を高めながら、特に環境を重視し、生活のアメニティやカンフォートを味わおうとする。第3に、余暇時間の増大にともなって、レジャー、レクリエーション、あるいは教養・文化活動などに関心を高め、生活そのものを創造していく。第4に、生活行動に高い機動性を発揮し、生活にモビリティ性をもたせる。第5に高齢化社会のなかで、単なる肉体的健康を求めるだけでなく、精神的にも社会的にも健康な状態、つまりウェルネスを求め、また社会的福祉の充実をも求める。第6に、社会...