貧血
1 症状が生じる病態生理
1.貧血とは
貧血とは,赤血球の産生と破壊のバランスが崩れ,血液中のヘモグロビン濃度が基準値を下回った状態をいう.
世界保健機関(WHO)では,女性は12g/dL,男性は13g/dL未満を貧血と定めている.
一般的には,ヘモグロビン濃度7g/dL程度から,顔面蒼白,動悸,呼吸困難,頭重感,注意力低下などの症状が明らかになる場合が多い.貧血の悪化が緩徐に進行する場合は,代償機構が働き,症状の自覚が遅れることがある.そのため,症状と血液検査データは直接的には合致しないことがある.
多量の出血や溶血で,ヘモグロビン濃度が急激に低下した場合には,10g/dL程度でも症状が明らかとなる.
長時間起立時(朝礼時など)に倒れる状態は,起立性低血圧(脳貧血)とよばれ,血圧の調節機構に関係する.これは,厳密にいえば貧血とは同義のものではない.起立性低血圧は血液検査値が基準値でも起こる.
しかし,貧血が起立性低血圧症状の出現に悪影響を与えることが多いため,一般には混同されやすい,したがって医療現場では,用語の使用に注意する.
2.貧血の起こるメカニズム
赤血球の産生と破壊
...