テクストと演出
~4.48サイコシスからみえる「存在する」こと~
最終日の授業で取り扱った『4.48サイコシス』について自分なりに意見をまとめたいと思う。
作者と作品について
作者のサラ・ケインは1971年に『Blasted』でデビューを飾り攻撃性とクールさを兼ね揃えた90年代ブリッティシュ・ポップ・ウェーブの劇作家の1人として名を馳せた。彼女の作品は希望を見出すことのできない世界情勢や、西側資本主義社会の大都市を背景に、勝者的価値観の渦巻く社会に居場所を見いだせず、周辺部に追いやられた人々を描いている。28歳の若さで自ら命をたちこの世を去ったが、彼女の作品は高い評価を受け、今もなお世界中で上演され続けている。
また遺作となった『4.48サイコシス』は鬱病を発症し、闘病の果てに自殺をはかった作者と主人公が重なって見えるようなドキュメンタリー的要素を含んだ作品となっている。「4時48分」とうい時間だが、作者はこの時間になると決まって目が覚め、覚醒した意識の中でこの作品を執筆したという由来がある。また、この時間は「自殺者が一番多い時間」ともされ、作品の中に漂う「孤独」や「絶望」を表現してい...