目取真俊と沖縄戦について
第二次世界大戦において沖縄がその中でも激戦地区となったことは多くの人に知られていることだろう。私も沖縄出身で何度かひめゆりの塔や防空壕に足を運んだ。今回は本抗議で取り上げられた目取真俊と沖縄戦について論じたいと思う。
目取真俊な作品の「水滴」は、主人公の徳正の視線から物語が語られる。主人公、徳正は妻のウシと二人暮しの農夫である。子供はいない。その徳正の右足がある日突然膨れ出し西瓜のような大きさになり、足先から水滴が落ちるという奇病に罹ってしまう。原因はわからない、水滴を分析してもただの水である。徳正に意識はあったが体を動かすことも言葉を発することもできなかった。そして、ある夜から寝たきりの徳正のもとに沖縄戦当時の兵隊たちが傷だらけの悲惨な姿で現れ、徳正の足先からの水滴を飲みにくるようになった。そこで徳正は、彼らが徳正が避難壕に置き去りにした兵隊たちであることに気がつく。毎晩訪れる兵隊たちは礼儀正しく、順番に徳正の足先からの水滴を飲んでは去っていく。徳正は自分だけが助かった、逃げたという罪の意識を押し込めたまま戦後を酒と遊びに費やすのだが、昔自分が防空壕の中に置...