1920~1930年代の科学技術と国際情勢~ジブリ作品「紅の豚」より~
1.はじめに
宮崎駿氏が監督を務めるアニメーション作品は、国内外問わず人気・評価共に高く、彼の作品はその多くがファンタジー的色彩の強いものであるが、実際には史実が忠実に反映されていたり、世界各地の神話・伝承が基になっていたり、社会啓発的側面が感じられたりと、単なるアニメーション作品に留まらない作品としての深さが感じられるものが多い。
本稿で述べる「紅の豚も」例外ではなく、豚が主人公というある種荒唐無稽な作品でありながら、作品内では舞台となった1929年前後のイタリア周辺の街並・風俗・国際情勢などがほぼ忠実に再現されている。また、宮崎駿氏の飛行機好きを反映してか、作中には様々な飛行機が登場する。このことから、この作品を題材に当時の国際情勢や科学技術について論じることができる。
ゆえに、宮崎駿作品を題材にすれば、単なるアニメ論に留まらない、様々な事象を論じることが可能なのである。
2.宮崎駿「紅の豚」の概要
「紅の豚」は、宮崎駿監督のアニメーション作品として、1992年に公開された。世界大恐慌時のイタリア・アド...