「脳と心をあやつる物質」を読んで
この本は脳と心の動きを<物質>の面から解説している。はじめはこうした脳と心を生む仕組みについて述べ、次に<物質>のアンバランスが生む脳と心の状態について述べている。そして身近な物質(特に食べ物)が脳と心に及ぼす影響を探ることにつながっている。この本を読んで、特に興味を持った点をいくつかあげていきたいと思う。前置きとして、まず脳と心には非常に密接なかかわりがあると元来信じられている。現在、脳研究者は「心は脳がつむぎ出すもの」と捉えられている。別の言い方をすれば、「心は脳の内的現象」ということである。ここでいう「心」には非常に広い意味の精神活動、すなわち、認知、情動、意志決定、言語発露、記憶、学習などが含まれているものと考える。どのようにしてこのような心の営みが成り立つかというと、それは脳の中にある数百億もの細胞の秩序だった働きに依存している。 ちょうど、コンピュータの中に膨大な数の素子やら回路やらがあって、その働きによって、表計算をしたり、漢字変換しながら文章を作成することができたり、画像処理や図形描画が可能にな...