激しい運動をするスポーツマンは意外に短命であるといわれている。運動をしているのに寿命が短くなってしまうのはどうしてだろうか。まず、老化の学説には「プログラム説」と「エラー破綻説」がある。プログラム説は遺伝子によって寿命が決まるというものであって、この説だけでは人間には希望がないといえる。それに対し、エラー破綻説は遺伝子損傷の蓄積で老化が促進されるというものであり、特に活性酸素と呼ばれる反応しやすい酸素が人間の細胞の呼吸を担っているミトコンドリアから放出され、遺伝子を傷つけるのである。つまり、激しく酸素を使う人は身体の中で発生する活性酸素が遺伝子を傷つけてしまうため、短命になってしまうのである。酸素が遺伝子を傷つけるというと意外に思うかもしれない。確かに酸素は身体に必要な元素なのだが、多すぎると組織を破壊する危険な物質でもあるのだ。これらのことは次のような実験で表すことができる。この実験はショウジョウバエを酸素20%のふつうの空気と、酸素濃度を50%に上げた空気の中で飼い、その生存率を比べたものである。酸素20%の空気で育てたショウジョウバエは平均75日も生存できたのに対し、酸素50%の空気で育てたショウジョウバエは平均30日で死んでしまったのである。この結果は人間に対しても同様で、かつて、保育器の乳幼児に過剰な酸素を与えたために、乳児網膜症で失明者が生じ、大問題になったことがある。また、肺機能が低下した患者でも、50%以上の濃い酸素を長期間吸入させることは禁止されているし、集中治療室では酸素が過剰になると警報機が鳴って、酸素を減らさなければならないのである。
このことから、現代人の運動不足は健康上問題であるという考えはおかしいとことになる。
身体活動が健康に及ぼす影響について
激しい運動をするスポーツマンは意外に短命であるといわれている。運動をしているの
に寿命が短くなってしまうのはどうしてだろうか。まず、老化の学説には「プログラム説」
と「エラー破綻説」がある。プログラム説は遺伝子によって寿命が決まるというものであ
損傷の蓄積で老化が促進されるというものであり、特に活性酸素と呼ばれる反応しやすい
酸素が人間の細胞の呼吸を担っているミトコンドリアから放出され、遺伝子を傷つけるの
である。つまり、激しく酸素を使う人は身体の中で発生する活性酸素が遺伝子を傷つけて
しまうため、短命になってしまうのである。酸素が遺伝子を傷つけるというと意外に思う
かもしれない。確かに酸素は身体に必要な元素なのだが、多すぎると組織を破壊する危険
ョウジョウバエを酸素 20% のふつうの空気と、酸素濃度を 50% に上げた空気の中で飼い、
その生存率を比べたものである。酸素 20% の空気で育てたショウジョウバエは平均 75 日も
生存できたのに対し、酸素 50% の空気で育てたショウジョウバエは平均 30 日で死んでしま
を与えたために、乳児網膜...