憲法論文答案練習 国会
法律と議院規則
【問題】
法律と議院規則との関係を説明しなさい。
【考え方】
・問題点
ⅰ法律は議院規則の所管事項について定めることができるのか。
ⅱ定めることができるとして、両者が矛盾抵触する場合の優劣関係はどのようになるのか。
・ⅰについての見解
1)明治憲法以来の慣行、実質的意味の法律は国会により制定されるのが原則であること等を根拠として、肯定する見解(肯定説)。
2)議院の自律性を重視して、これを否定し、仮に法律で定められても議院に対する拘束力を有しないとする見解(否定説)。
3)否定説の根拠を踏まえながら、憲法41条が国会を唯一の立法機関であるとした趣旨が、国家による国民の権利に対する不当な侵害を防止する点にあることを考慮して、原則として、否定説の立場に立つが、議院規則が国民の権利を制約し義務を課す場合には、肯定説の立場に拠るべきとする見解(部分肯定説)。
・ⅱについて
…法律が議院規則の所管事項について定めることができるとすると、次に問題となるのは、両者が矛盾抵触する場合の優劣関係である。
見解
①「立法」が国会によってなされるのが当然であること等を根拠として法律が優先するとする見解(法律優位説)。
②議院(特に参議院)の自律性を確保する上で不可欠であること等を根拠として、一院の内部規律または手続に関する事項は規則が優先するが、その他の事項については法律が優先するとする見解(部分的規則優位説)
【答案例】
憲法51条は、両議院に議院規則の制定を認めるが、かかる議院規則の所管事項について、法律で定めることができるのか。また、定めることができるとして、両者が、矛盾・抵触する場合、その優劣関係はどのように考えるべきなのかが問題となる。
思うに、議院規則は、議院の自立性の現れとして、議院に付与されたものである以上、それが、他の院あるいは政府との合意によって成立する法律に服するいわれはない。また、法律は、参議院の合意なしに成立しうるもの(憲59条)であるから、議院規則の所管事項について、法律で定められるものとすると、参議院の自律性にとって致命的なものになりかねない。そこで、原則として、議院規則の所管事項については法律で定めることはできず、たとえ法律で定めても議院に対する拘束力を有しないと考えるべきである。
ただ、そもそも、憲法41条が、国会を唯一の立法機関であるとした趣旨が、国家による国民の人権に対する侵害を防止することにあることを考えると、国民の権利を制約し、国民に義務を課す規範の定立については、国会が、それをなすことができなくてはならないし、また、なすべきであると考える。
したがって、前述のように、原則として議院規則の所管事項については法律で定めることはできず、たとえ法律で定めても議院に対する拘束力を有しないと考えるべきであるが、このような憲法41条の趣旨からすれば、議院規則により国民の権利を制約し義務を課す場合には、当該事項について法律で定めることができるし、また、その場合に議院規則と法律とが矛盾・抵触するのであれば、法律が優位するものと解する。