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平安時代後期仏教の特質を論ぜよ。
平安時代後期の仏教の特質は、①政治からのかい離、②実践修行の重視、③民間信仰への移行があげられる。本稿では、以上の点に留意しながら、平安時代から鎌倉時代にかけての仏教の変遷を追う。
一章 奈良仏教からの発展
平安仏教は、現在の宗派仏教の始まりといえるが、その基礎を築いたのが、最澄(七六七~八二二)である。最澄の主張は、奈良仏教への反省・批判が出発点となっている。その批判は、
①理論中心で実践がなく、形式化されている。
②国家権力と結びついている。
③成仏できる者とできない者とがいる。
というものであった。
奈良仏教は、南都六宗による鎮護国家のための教義研究中心であり、そのため朝廷と学問僧との癒着が仏教の形骸化を生む。最澄の思想は、一乗思想に基づいており、そこでは、「一切衆生悉有仏性」(『法華経』)であるため、すべての人が仏性を持ち、成仏できるという思想である。法相宗の徳一との三乗一乗論争(弘仁八年(八一七年))にあるように、限られたもののみが成仏できる三乗思想とは相反する思想であった。
一方、同時代に高野山に真言宗を開いたのが、空海...