可罰的違法性論の再構成における考察
第1章 緒論
本論文では可罰的違法性論における相対的軽微性の具体的判断基準について日本刑法学会理事であり、首都大学東京都市教養学部教授である前田雅英教授が1982年に発表した「可罰的違法性論の研究」の“可罰的違法性論の再構成”で主張した論(1)に対する私自身の見解を述べる。
それにあたり本章で可罰的違法性論の定義と意義を明らかにした上で、次章で判例分析に立脚した前田教授の可罰的違法性論の再構成を挙げ、私なりの可罰的違法性論の再構成を試みる。
始めに、可罰的違法性論とは「違法な行為につき、その違法性が実質的に考察して処罰に値しない程度であることを理由に犯罪の成立を否定する理論である」と前田教授は定義されている。
模範六法にも“可罰的違法性”が“零細な反法行為は、特に危険視すべき状況の存しない限り、犯罪を構成しない。”と定められている(2)。
可罰的違法性を創唱した宮本英修教授は「元来犯罪ハ社会ノ必然的現象ニシテ到底之ヲ根絶シ得ベキニアラス。強イテ之ヲ根絶セント欲スレハ……、個人ノ利益ヲ侵害シ、社会文化ノ発達ヲ妨ケルニ至ル。故ニ罰ハ之ヲ行フ...