日本国憲法 科目終了試験 解答例
天皇の権能について述べよ。
日本国憲法において、天皇の行う国事行為に対し、天皇はその責任を負わない。
日本国憲法第一条は「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」と規定している。ここで「象徴」とは、無形的、抽象的なものを表現する有形的、具体的なものを指すのである。大日本帝国憲法における天皇は、象徴としての地位を持ちながら、主権者でもあり、日本国憲法とは異なり明確に「元首」と規定されていた。
これに対し、日本国憲法は、天皇の統治権の総攬たることを否定して、象徴としての地位を認めたにすぎない。ここに、天皇の根本的変革が見出される。日本国憲法で、民主主義を採用するにあたって、両立しない天皇制を改廃しなかったことには、日本の伝統的歴史性や敗戦による国民感情をも考慮した連合軍側の配慮であったと推察される。そこで、日本国憲法では民主制を損なうことなく、天皇制を維持するために、天皇に象徴としての地位のみを規定したのである。つまり、天皇の象徴としての地位は、日本国憲法によって創設されたものではなく...