問題と目的
身体運動と知覚は相補的に働き、協働して環境に適応的な行動を起こすことがある。この時、運動と知覚の間に協応があるという。スポーツや筆記など、我々の身の回りには運動と知覚の協応を必要とする行動はたくさんあり、これらは初めから運動と知覚が協応していたのではなく、発達過程における学習によって協応するようになったものである。この学習を知覚=運動学習という。知覚=運動学習において、前に学習したことが後の学習に影響を与えることが知られている。この事を学習の転移といい、例えば右手による学習経験が左手による学習に対し促進的に働くことが挙げられる。これを特に両側性転移という。本実験では鏡に映った手を見ながら線を引くという鏡映描写を用いて運動と知覚の間に協応が無い状況を実験的に作り出し、線引きの学習過程で両側性転移が起こるか調べることで知覚と運動の協応学習のメカニズムを検討する。もしも鏡映描写の学習が一方の手の筋肉群に特有な技能を学習するならば転移は起こらないはずである。また、鏡映描写学習が鏡像に対する手の運動に関する一般的な学習であれば完全な転移が起こるはずである。もし上記2つの技能を同時に学習しているのであれば不完全な転移が起こると考えられる。
方法
◆実験計画
独立変数は利き手で行う練習試行の有無である。統制群は練習試行の替わりに計算問題を行った。従属変数は非利き手で行うポスト試行における所要時間と逸脱回数である。
◆被験者
XX大学の心理学部学生男女53名及び同大学院生1名が被験者を務めた。
◆材料
13種類の不規則な図形パターン(全長600mm、コース幅3mm、屈曲点の数11個、屈曲点間の距離50mm)及び、鏡、小数点以下二桁まで計れるストップウォッチ、図形を覆う遮蔽を用いた。
鏡映描写学習における
両側性転移の影響
心理学専修課程 学生証番号XXXXXX
XXXX
XXXX年X月XX日提出
問題と目的
身体運動と知覚は相補的に働き、協働して環境に適応的な行動を起こすことがある。この時、運動と知覚の間に協応があるという。スポーツや筆記など、我々の身の回りには運動と知覚の協応を必要とする行動はたくさんあり、これらは初めから運動と知覚が協応していたのではなく、発達過程における学習によって協応するようになったものである。この学習を知覚=運動学習という。知覚=運動学習において、前に学習したことが後の学習に影響を与えることが知られている。この事を学習の転移といい、例えば右手による学習経験が左手による学習に対し促進的に働くことが挙げられる。これを特に両側性転移という。本実験では鏡に映った手を見ながら線を引くという鏡映描写を用いて運動と知覚の間に協応が無い状況を実験的に作り出し、線引きの学習過程で両側性転移が起こるか調べることで知覚と運動の協応学習のメカニズムを検討する。もしも鏡映描写の学習が一方の手の筋肉群に特有な技能を学習するならば転移は起こらないはずである。また、鏡映...