序論
『コンプレックス』という言葉を最初に持ち込んだのはヨーゼフ・ボロイアーであるが、有名にしたのはユングだ。ユングの定義によれば、コンプレックスとは、『無意識内にある、何らかの感情によって統合されている心的内容の集まり』である。怒りや悲しみなどの強い感情や体験、思考が、無意識的に結びついている状態を意味するものであるので、コンプレックス=劣等感は正しいとは言えない。コンプレックスが無意識内にあるのだとすれば、私たちがそれを見つけるのは容易ではない。
そこで登場するのが、投影法である。たとえば空を見たときに、「なんだかさびしそうな空だ」と感じたとする。しかし他人は「気持ちいい空だ」と思っていたような経験は無いだろうか。心の内の「寂しい」という感情を通して空を見ているから寂しいと感じ、一方友達は「気持ちの良い」という感情を通して見ているから気持ち良いと感じられるのである。心をモノに映し出すことを「投影」と呼ぶ。投影法(projection)という名称はフランク(1939)によって初めて用いられたが、その特徴は用いられるテスト材料や教示など刺激状況やテスト状況に多かれ少なかれ曖昧さ、...