2008年秋のリーマン・ショック以降、世界を覆った金融不安は、実体経済にも多大な影響を及ぼした。各国政府は景気回復のため、巨額の財政出動に動き、…
財政再建に向けた政策提言
はじめに
2008年秋のリーマン・ショック以降、世界を覆った金融不安は、実体経済にも多大な影響を及ぼした。各国政府は景気回復のため、巨額の財政出動に動き、日本も約15兆円の財政支出を行った。このような事情から、小泉内閣時に設定した「プライマリー・バランスを2011年度までに黒字化する」という目標は、実質破たんした。しかし、先進国中最悪のGDP比1.5倍、850兆円もの借金を抱え、2010年代初頭以降団塊の世代が年金受給者となり始めるなど、高齢化が一層進展する中で、財政再建へ向けた取り組みは、待ったなしの課題である。ここでは、財政再建のための中長期的な観点からのビジョンと、それを実現するための直近の対策を含む工程表を示す。
中長期的な観点からのビジョン
若年世代の生産力を増やす
今後、団塊の世代が年金受給者となり始めることを考えると、社会保障費を大幅に抑制することは非常に困難である。生産年齢人口の減少は、GDP成長率にもマイナスに作用するため、歳入面での減少圧力にもなる。しかし、少子高齢化が進む中で、こうした人口構造をすぐに変えるのは不可能に近い。したがっ...