国際司法裁判所(ICJ)規定と国際刑事裁判所(ICC)に関するローマ規定の比較から、二つの裁判所の差異を考察するが、まず両者の裁判所の意義や特色等を調べ、その中から規定を比較し、差異について述べていきたいと考える。
まず、国際司法裁判所(以下ICJ)について、ICJとは、国際法に基づく裁判で国家間の紛争を平和的に解決することを任務として、1945年に設立された。ICJは、国際連合憲章により、国連の「主要な司法機関」とされ(国連憲章7条、92条)、国際の平和と安全という国連の目的の実現のために活動している。ICJには、国家間の紛争を解決する裁判手続のほかに、国連の諸機関の求めに応じて法律問題について勧告的意見を述べる手続きがある。地域的な裁判所と異なり、全国連加盟国は自動的にICJ規定の当事国となる(国連憲章93条1項)。また、国際法の特定の分野に特化した専門的な司法機関と異なり、ICJには国際法上のすべての問題を付託できる。ICJは、このような普遍的性格をもった唯一の国際司法機関である。
ICJの管轄権について、管轄権とは裁判所が裁判を行える権能のことだが、ICJに訴訟を提起でき...