「成人の意思能力と行為能力の違いを説明しなさい。」

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    民法1 第1課題 「成人の意思能力と行為能力の違いを説明しなさい。」 合格レポート

    資料の原本内容

       民法1 「成人の意思能力と行為能力の違いを説明しなさい。」
     意思能力とは、物事の道理を見極め判断する精神的能力及び自己の契約の結果生じる利害得失を予測できる知的能力のことである。意思能力を持たない者の意思表示は、本人の意思に基づくものとはいえず、個人意思自治の原則に反する。そのため、意思無能力者の意思表示は契約を締結させることが出来ず無効となる。つまり、意思能力とは実質的には、有効な意思表示をすることによって他人との契約を締結する能力である。意思能力があるとされるために必要な知的能力の程度は、重要な身分行為では15歳程度、一般の財産行為では7歳から10歳程度の知的能力が必要とされている。意思無能力を理由とする無効は意思無能力者本人の保護を目的とする制度であるため、意思無能力者側の者だけが無効を主張することが出来る。当事者の契約当時の意思能力の有無の判断は個別具体的に審査される。 しかし、①意思無能力を理由に法律行為の無効を主張できるとしても、契約当時に意思能力を欠いていたことを自ら立証することは困難である。また、②意思無能力者とは知らずに契約を結んでしまった相手方が、あとで意思無能力を理由に契約の無効にされ不測の損失をこうむるおそれがある。そこで、 それらの問題点を克服し、本人の保護と取引の安全を守るため、行為能力制度が存在する。
     行為能力とは、法律行為を単独で確定的に有効に行うことが出来る資格を行為能力といい、知的能力が不十分な者はこの資格を一部制限される。行為能力を制限される者を制限行為能力者という。この制度は、意思能力に欠陥がある者をあらかじめ恒常的に制限行為能力者として、単独での法律行為を一部制限し、さらに、保護者を設け、保護者が代わりに行為をするか、保護者の同意を得て本人が行為するべきとされている。制限行為能力者がこれに反して行った法律行為は取り消すことができる。取消しがなされると、行為は遡及的に無効となり、取引前に債務が履行された場合には当事者が受領したものは不当利得として返還する義務が生じるが(民法703条)、制限行為能力者の場合、現存利益のみを返還すればよい。取引の安全のため、取引相手が制限行為能力者かどうかは取引の時点で確認することができる。さらに制限行為能力者との取引相手方には催告権が与えられ、制限行為能力者が詐術を用いた場合、取消権は排除される(民法21条)
     成人の制限行為能力者には、知力の程度に応じて形式的、画一的基準に基づき、成年被後見人、保佐人、補助人の三段階に分類され、各類型ごとに成年後見人、保佐人、補助人の後見役を設けている。後見役は必要に応じて複数人でも法人でも選任できる。
     成年被後見人とは、精神上の障害により事理弁識能力を欠く状況にある者で、後見開始の審判を受けた者を言う。身分行為と日用品の購入など日常生活に必要な行為を除き、単独で自らの財産の管理や処分を禁じられる。 保護者の成年後見人には、原則として全面的な代理権・取消権が付与される。被保佐人とは、判断能力が著しく不十分で保佐開始の審判を受けた者である。被保佐人は13条1項に掲げられている行為は保佐人の同意を得てしなければならない。それ以外の法律行為は、被保佐人自ら単独で有効に行うことが出来る。被補助人とは、判断能力が不十分で比較的軽度の痴呆高齢者、知的障害者、認知症、自閉症などで補助開始の審判を受けた者である。被補助人はある程度の判断能力を備えているため原則として単独で有効な法律行為をすることができるが、民法13条の一部の行為を単独ですることが出来ず、同意なしで行った行為は、取り消し得べき行為となる。(16条4項)また、補助人には追認権もある。代理権だけか、同意権・取消権のどちらか、あるいはそれら3つ全ての権限を付与する、という3通りの保護の仕方を選ぶことが出来、さらにその権利の対象となる法律行為の範囲も選択可能である。 
     結論、以上のように意思能力と行為能力とは、どちらも知的能力不足の者を保護するための制度であるが、意思能力がない者の保護は契約を無効とすることに対し、行為能力が制限されている者の保護は保護者を定め、取消権を与えることによって契約の取消しを可能とすることにより保護する。意思能力と行為能力は保護の方法において異なる。
     (意思無能力者による行為を無効とすることによって意思能力を欠く者が意思能力を十分に持つ者との自由競争の餌食になることを防ぎ、意思無能力者を法律で保護することができる。)

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