幕末期の開港が日本経済に与えた影響について具体的に論じる
日本経済史 分冊1
日米修好通商条約や安政の五カ国条約の締結により、1859年にまず箱館・神奈川・長崎の三港で貿易が開始した。
神奈川は間もなく、後背地が広く外国商人を管理しやすい横浜に変更され、横浜開港にともなって下田は閉港された。また兵庫・新潟が開港されたのは、西暦でそれぞれ1868年と1869年の1月1日のことであった。
この開港はこれまでの流通機構や生産構造に影響を及ぼした。
貿易の発展とともに、重大な経済問題の一つとして金の海外流出が挙げられる。当時の日本は金1に対して銀5で交換していたが、外国は金1に対して銀15で交換していたため、国内外での金銀比価の差を利用して外国商人が大量の銀貨を持ち込んで日本の金貨を海外へ持ち出したという『金銀比価問題』に対して、幕府は金貨の品質を大幅に引き下げる改鋳によってこれを防いだが、貨幣に実質的な価値が下がったため、物価上昇に拍車をかける結果になった。
物価高騰の基本的な原因は、第一に開港後の対外的関係からおきたものと、第二は従来からの幕府政策の破綻からくるもので、これらは絡み合って国民各層に深刻な影響を与えた。
貿易が始まると輸...