1.『国家』における国家の提起
まず正義とは強者の利益か否かについて激しい論争が繰り広げられ、一応<不正>が<正義>より得にはならないという決着をみる。しかし、それよりもまず普遍的な<正義>を見出すのに、より理解しやすいよう、「小さな文字で書かれた正義」すなわち個人規模での正義よりも、「大きな文字で書かれた正義」すなわち、国家規模での正義のありようを考察する取りきめがなされる。
人々は生活の必要のために国家を形成する。必要最小限度が整い、自足と平和を得ると、贅沢品への欲が生まれ、土地・財貨を求め、国家防衛のための軍隊が必要となる。国家防衛に当たる「守護者」〔軍人〕たちは、戦時には勇猛にして、自国の同胞に対してはおだやかで親切であるべきだとすれば、哲学的な性格が要求される。さらに国家の統治を任とする、別の守護者〔支配者〕も必要となる。
議論がここまで進んできたところで、哲人国家の概念があらわされる。
2.プラトンの哲人国家
プラトンの理想とする哲人国家は、良く教育され、知恵の徳をもち、善を認識できる、優秀な守護者(哲人)が支配することでもたらされる、正義の国家である。
(1)国家の三種族と四元徳
贅沢な国家に成長してきた国家には、生産者<金儲けをする種族>、軍人<補助者の種族>、支配者<守護者>の三種族が存在するが、その中の一つの階層だけが特別に幸福になるということを目指すのではなく、国家の全体ができるだけ幸福になることを目指す。それぞれの階級がそれぞれの個人の仕事を全うすることが国家全体としての幸福を生む。
『国家』のテーマは、副題に明示されるように、「正義について」であるが、私はその「正義」を明らかにする際に使われる「国家」、プラトンの理想とする国家を考えたい。1・2で『国家』における哲人国家の概念を記し、3で私見を述べる。
1.『国家』における国家の提起
まず正義とは強者の利益か否かについて激しい論争が繰り広げられ、一応<不正>が<正義>より得にはならないという決着をみる。しかし、それよりもまず普遍的な<正義>を見出すのに、より理解しやすいよう、「小さな文字で書かれた正義」すなわち個人規模での正義よりも、「大きな文字で書かれた正義」すなわち、国家規模での正義のありようを考察する取りきめがなされる。
人々は生活の必要のために国家を形成する。必要最小限度が整い、自足と平和を得ると、贅沢品への欲が生まれ、土地・財貨を求め、国家防衛のための軍隊が必要となる。国家防衛に当たる「守護者」〔軍人〕たちは、戦時には勇猛にして、自国の同胞に対してはおだやかで親切であるべきだとすれば、哲学的な性格が要求される。さらに国家の統治を任とする、別の守護者〔支配者〕も必要となる。
議論がここまで進んできたところ...